世界の食料問題と日本の農業課題とは?アグリビジネス・緑の革命から6次産業化まで解説

教育__解説
ルナ
ルナ

アトラス、世界の農業の分類はだいたい分かったけど、最近ニュースで「食料問題」って言葉をよく聞くよ。これって何が問題なの?

アトラス
アトラス

いいところに気づいたね。現代の世界の農業を理解するキーワードの一つが「アグリビジネス」なんだ。今日は、世界の食料問題と農業の近代化、そして日本の農業構造と課題を順番に見ていこう。

アグリビジネスとフードシステム

小麦などの穀物の流通には「穀物メジャー」と呼ばれる巨大な多国籍企業が関わっています。穀物メジャーは、エレベーターと呼ばれる巨大穀物倉庫や輸送手段を有し、穀物の集荷・貯蔵・輸送・販売を一体的に営むだけでなく、種子・肥料の開発や農産物加工など、農業に関するさまざまな事業(アグリビジネス)に進出しています。

農産物の生産から消費に至る食料供給体系のことを「フードシステム」と呼びますが、穀物メジャーはこのフードシステム全体を統轄しているといえます。アメリカ合衆国に集中する穀物メジャーは、多くの国々に加工・流通・営業の活動拠点を持ち、世界中に情報網を張りめぐらせています。さらに、気象情報や衛星画像を分析するなどして、世界各地の作付け状況や収穫量を予測し、利益の増大を図っています。穀物メジャーのグローバルな活動は、世界の穀物市場の市場価格や備蓄の動向に大きな影響を与えています。

ルナ
ルナ

つまり、農産物を作るところから食べるところまで、全部つながってるってこと?

アトラス
アトラス

穀物メジャーは、農産物の生産から消費までの流れ全体に関わる、すごく大きな存在なんだよ。

農業のグローバル化と食料問題

今日、農産物の輸出入が増加し、農業がグローバル化しています。その背景には、自国の農産物だけでは増加する人口に必要な食料を賄いきれない国々が、外国からの輸入に依存する傾向が強くなったことがあります。また、アメリカ合衆国やオーストラリア、EUなどの先進国が、生産性の向上や政策の後押しによって穀物などの生産を伸ばし、過剰となった農産物の輸出を拡大したことも要因です。

外国からの農産物の大量輸入や巨大企業の農業関連事業への参入は、発展途上国に住む人々の生活や農業形態にも大きな変化を与えています。例えばアフリカでは、農民が換金用の商品作物の栽培を増やす一方で、主食のとうもろこしや米は輸入しなければならないといった食料問題も発生しています。

ルナ
ルナ

食料を輸入に頼っている国は、不安になることもあるよね?

アトラス
アトラス

自国の主食を輸入に頼りながら、輸出用の作物を作っている、というねじれた状況が起きている地域もあるんだ。

農業の近代化と緑の革命

産業革命以降、欧米や日本などの先進国では、品種改良、化学肥料・農薬の使用による収穫量の増大、機械化など農業の効率化が進められました。第二次世界大戦後には、高収量品種の導入を中心とする「緑の革命」と呼ばれる技術革新を通じて、農業の近代化が発展途上国にも波及し、食料問題や農業と工業・商業の所得格差の是正に貢献しました。

環境保全型農業への新しい動き

一方で、近代的な農業の環境への影響や食の安全に対する関心の高まりから、農業の近代化のあり方を見直す動きも現れています。

キーワード内容
緑の革命国際的な農業研究機関で開発された高収量品種の導入を中心に、発展途上国の穀物の生産性を飛躍的に向上させた技術革新。化学肥料の使用や灌漑の基盤整備が必要となる
環境保全型農業環境への負荷を軽減することを重視した農業
有機農業化学肥料や農薬などを使用せずに、土壌中の微生物などのはたらきを生かして作物をつくる農業(環境保全型農業の一つ)
遺伝子組み換え作物遺伝子を人工的に操作することで新しい特性が与えられた作物。省力化やコスト削減につながる一方、生態系や食品・飼料としての安全性を懸念する意見もある
ルナ
ルナ

いいことばかりに聞こえるけど、何か課題もあるの?

アトラス
アトラス

うん。化学肥料や農薬の大量使用、遺伝子組み換え作物の安全性など、近代化が進んだことで新しく出てきた課題もあるんだ。だからこそ、環境保全型農業や有機農業のように、農業の近代化のあり方を見直す動きが出てきているんだよ。

発展途上国における農業の二重構造

発展途上国では、農業の近代化の過程で、先進国からの投資を受けた生産性の高い農業と、自給的な性格の強い伝統的な農業が「二重構造」になっている場合が多くみられます。中南米では、多国籍企業の資本や技術によるプランテーションでの商品作物の生産が、地元住民による自給的農業と併存しています。

先進国向けの農産物には厳しい品質基準があり、それを満たせなければ輸出業者が価格の決定権を握るため、農民が不利な立場に置かれることもあります。また、化学肥料や農薬の大量使用、耕作地の拡大などによる環境負荷の増大も問題となっています。

日本の農業構造の特徴

日本は山がちで、耕地面積は全国土面積の約12%にすぎません(2018年)。農家のほとんどは家族労働を中心としていて、農民1人あたりの耕地面積もアメリカ合衆国やオーストラリアと比べると極めて小さいです。狭い耕地に肥料や農薬を大量に投下して高収量をあげる「集約的農業」を行ってきたため、生産費用はかかるものの、耕地1haあたりの農業産出額は高くなっています。

若者の農業への就業が伸び悩み、農業人口は高齢化が進んでいます。農業を副業とする農家の割合が高く、農業所得が中心の「主業農家」は15%に満たない状況です(2015年)。

日本の農業政策の変化

日本では、第二次世界大戦後、政府がすべての米を買い入れ、価格保証していました。しかし食生活の多様化に伴い米の消費が伸び悩んだため、政府は米の買い入れ価格を抑えて、作付け面積を制限する「減反」を奨励しました。1995年に米の流通が自由化されると、「銘柄米」の生産で競争が激化するとともに、米の価格は低下しました。

一方、日本は農家を保護するために、米以外でも国内農産物と競合するものについては輸入を制限してきましたが、GATTやその後のWTOの農業交渉を通じて、農産物貿易の自由化への流れが強まりました。1990年代に入ると牛肉・オレンジなどの輸入制限が緩和され、さらに中国や東南アジアなどから野菜の輸入も増えたため、外国産の安い農産物との競合が強まり、国内の農業に影響を与えています。

ルナ
ルナ

これからの日本の農業はどうしていくべきなんだろう?

日本の農業課題への対応(スマートアグリ・6次産業化など)

こうした状況のなか、経営の大規模化を進めて経費削減に努めたり、付加価値の高い農産物の生産に力を入れたりする地域の中核的農家を重点的に支援するなど、農業構造を変革して競争力を高める政策が進められています。

全国の平野部の稲作地域や、北海道、南九州、沖縄の畑作地域では、離農した農家の農地を集めて耕地を広げ、大型農業機械を用いる大規模な経営が出現しています。近年は、GNSSを用いたトラクターの自動運転や、ドローン(無人航空機)による作物の生育状況の把握など、ICTを活用して作業を省力化・効率化する「スマートアグリ」の技術開発も進んでいます。しかし、規模の拡大とともに労働力の確保が課題となっており、外国人技能実習生の受け入れも急速に進んでいます。

また、品質の向上や新品種の開発、ブランド農産物の育成にも力が入れられており、食の安全や高級食材への関心の高まりから、中国やアジア諸国の富裕層向けに日本ブランドの農産物の輸出も拡大しています。一方で、和牛やシャインマスカットなど、日本で育成された品種が海外に流出し、現地で生産される問題への対処も必要となっています。

アトラス
アトラス

品質の高さだけじゃなくて、品種そのものを守ることも、これからの課題なんだよ。

地域の産業としての農業の魅力を高めるために、農産物の生産だけでなく、その加工や流通・販売にも農家や地域の人々が関わり、所得や雇用の増大を目指す「6次産業化」の試みも盛んになっています。農業体験や直売所の訪問などを含むアグリツーリズムや、景観や文化の保全といった農業の多面的機能を生かした農村地域の振興も、こうした取り組みの一環です。

ルナ
ルナ

6次産業化って、1次×2次×3次で6次になるってことなんだね!

アトラス
アトラス

そのとおり。生産(1次産業)・加工(2次産業)・流通・販売(3次産業)を地域でまとめて手がけることで、所得の向上や雇用の発生、地域の活性化につなげる取り組みなんだよ。

まとめ

  • 穀物メジャーを中心とするアグリビジネスが、生産から消費までのフードシステムを統轄している
  • 農産物の輸出入増加による農業のグローバル化が進み、食料を輸入に依存する国とそれを支える先進国が存在する
  • 緑の革命によって食料問題は改善したが、環境保全型農業・有機農業・遺伝子組み換え作物への対応が新たな課題となっている
  • 発展途上国では、先進的なプランテーションと自給的農業の二重構造がみられる
  • 日本は集約的農業で農業産出額は高いが、農業人口の高齢化が進み、主業農家は15%未満(2015年)
  • 米政策は減反から自由化へ移行し、貿易摩擦による輸入拡大が国内農業に影響を与えている
  • スマートアグリ・ブランド農産物の育成・6次産業化など、地域の取り組みによる農業の魅力向上が進められている
ルナ
ルナ

うーん、世界の動きと日本の課題がつながって見えてきた!次は林業と水産業も知りたいな。

アトラス
アトラス

よし、それは次回のテーマにしよう!

コメント