
アトラスくん、前回はアジアの自給的農業を見たけど、今回はヨーロッパや新大陸の農業だよね?

そうだよ。今日は「商業的農業」と「企業的農業」を見ていこう。商業的農業はヨーロッパで発達した、販売を目的とする農業のことだよ。
商業的農業の発達 — 三圃式農業から産業革命へ
ヨーロッパでは古くから麦類の畑作が行われてきましたが、同じ作物を連続して栽培すると地力が低下します。それを防ぐために、輪作や休閑を取り入れた三圃式農業のような工夫が広がり、現在行われている各種の農法が成立していきました。
その後、産業革命によりいち早く工業化が進んだことで、世界に先がけて作物の販売を目的とした商業的農業が発達しました。そして、各地域の農業の近代化を通じて、それぞれの地域で有利な農産物の生産に集中する傾向が強まり、大都市や工業地域の近郊では酪農や園芸農業が発達するなど、農業の地域分化が進みました。

ぐるぐる回すから「輪作」なんだね!

商業的農業には4つの形態があるんだ。順番に見ていこう。
商業的農業の4つの形態(混合農業・酪農・園芸農業・地中海式農業)
| 形態 | 内容 | 主な分布地域 |
|---|---|---|
| 混合農業 | 地力の低下を抑える輪作と牧畜を組み合わせる農業形態。中世ヨーロッパの三圃式農業から発達した。小麦・ライ麦などの穀物と、かぶ・てんさいなどの根菜類、えん麦・大麦・牧草などの飼料作物を輪作するとともに、肉牛・豚・鶏などを飼育する | ドイツ・フランスなど中部ヨーロッパ |
| 酪農 | 牧草や飼料作物を栽培して乳牛を飼育し、生乳・バター・チーズなどを生産する | イギリスやデンマークなど冷涼で酸性土壌のため穀物栽培にあまり適さない地域。冷凍船発明後はオーストラリア・ニュージーランドにも拡大 |
| 園芸農業 | 現金収入を目的に野菜・果実・花卉を栽培。単位面積あたりの収益が大きく、資本を投入して集約的に行う | 大都市近郊(近郊農業)。輸送園芸(トラックファーミング)として遠方でも展開 |
| 地中海式農業 | 夏の高温乾燥に耐える樹木作物(オリーブ・ぶどう・レモンなどのかんきつ類・コルクガシなど)の栽培と、冬の小麦栽培・羊やぎの飼育を組み合わせる | 地中海沿岸地域、アメリカ合衆国南西部や中南部など |

混合農業は、飼料作物も作って家畜も育てるから、なんだかバランスがいいね。酪農は大消費地の近くに発達するって聞いたことあるよ?

うん。大消費地の近くで発達することも多いけど、19世紀後半に冷凍船が発明されてからは、オーストラリアやニュージーランドのように大消費地から離れた地域でも大規模な酪農地域が発達したんだ。

園芸農業の「トラックファーミング」って、トラックで運ぶってこと?

そうそう。輸送手段が発達したことで、市場から遠い地域でも野菜や花卉を運べるようになったんだ。オランダは花卉栽培の先進国で、温度・湿度・養分などを自動管理した施設で工業的に生産し、世界各地に輸出しているよ。日本もケニアやコロンビアなど、航空輸送を使った遠隔地の新興産地からバラやカーネーションを輸入しているんだ。
企業的農業とは — 新大陸で発達した大規模農業
企業的農業は、南北アメリカやオーストラリア、そのほかのヨーロッパの旧植民地で、ヨーロッパからの移住者によって始められた農業です。大きな資本と最新の農業技術を用いた大規模な生産を特徴とし、産業革命後の輸送技術の発達を背景にヨーロッパの市場に向けて発展しました。各地域の自然条件に合った単一の作物を栽培する「適地適作」が行われてきましたが、近年は社会条件に応じて多角化が進んでいます。
企業的農業の3つの形態(企業的穀物・畑作農業・企業的牧畜・プランテーション農業)
| 形態 | 内容 | 主な分布地域 |
|---|---|---|
| 企業的穀物・畑作農業 | 小麦や飼料作物を大規模に栽培。世界の穀倉地帯として、世界全体の市場需給に大きく影響を与えてきた。広大な土地で大型農業機械を使い、少ない労働力で耕作するため労働生産性は極めて高い。一方、地下水を利用した灌漑地域では、地下水の枯渇や土壌の塩性化などの問題も生じている | 北アメリカの中央平原〜グレートプレーンズ、アルゼンチンのパンパ北部〜ロシア南部、オーストラリア南東部など |
| 企業的牧畜 | 牧草地・放牧地・家畜の水飲み場などを備えた広大な企業的牧畜が成立。作物栽培が難しい乾燥地域で発達してきた。近年は機械化が進み、出荷前にフィードロットで肉量を増やす肥育が行われている | アメリカ合衆国のグレートプレーンズ、ブラジルのカンポ、アルゼンチンの乾燥パンパ、オーストラリアの西部や南部、南アフリカ共和国など |
| プランテーション農業 | 熱帯・亜熱帯地域の大農園で行われる企業的農業。ヨーロッパによる植民地支配の下で発達し、世界市場向けの商品作物を単一耕作(モノカルチャー)で大規模に栽培する。植民地内に加工施設や労働者の住宅があることも特徴。独立後は各国政府への接収や現地資本による経営も進んだ | 中南米(バナナなど)、東南アジア(天然ゴム・油やしなど)、アフリカなど(地域によって作物に特徴がある) |

あ、南半球って北半球の端境期に輸出できるんだよね!

さすが、覚えてたね。企業的穀物・畑作農業では、南半球の収穫期が北半球の端境期にあたることが、輸出に有利な点として活かされているんだ。

フィードロットって、具体的にはどんな施設なの?

牧場内に放牧地とは別の小さな区画を設けて、穀物を中心とする濃厚飼料を与え、家畜を短期間で肥育する施設のことだよ。これによって、質の高まった肉牛をつくることができるんだ。
まとめ
- 商業的農業はヨーロッパで発達し、三圃式農業の輪作・休閑の工夫から、産業革命を経て地域ごとに専門化が進んだ
- 商業的農業の4形態は「混合農業・酪農・園芸農業・地中海式農業」
- 混合農業は穀物・根菜類・飼料作物の輪作と家畜飼育を組み合わせる
- 酪農は乳牛による生乳・乳製品の生産。冷凍船の発明で遠隔地でも発達した
- 園芸農業は大都市近郊の近郊農業や、施設を使った輸送園芸(トラックファーミング)
- 企業的農業はヨーロッパからの移住者が新大陸で始めた、適地適作・大規模生産の農業
- 企業的農業の3形態は「企業的穀物・畑作農業・企業的牧畜・プランテーション農業」

こうした規模の大きい農業は、世界市場との結びつきも強いんだ。次回は、こうした農業が世界の食料問題や日本の農業課題にどう関わっているのかを見ていこう!



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