
アトラス、世界地図を見てるとね、地域によって作ってる作物が全然違うよね。これってどうやって決まるの?


いい質問だね。農業の発達と分布は、大きく分けると「自然条件」と「社会条件」という2つの要因によって決まるんだ。そして、世界中の農業を整理して分類したのが、地理学者ホイットルセーの「農業区分」だよ。今日はこの2つをセットで理解していこう。
農業に影響を与える2つの条件
作物の生育や家畜の繁殖は、気温・降水量・地形・土壌などの自然条件から強い制約を受けます。一方で、農地の所有関係、経営面積の大小、市場までの距離・輸送手段、食生活や文化なども、農業の形態に影響を与える大きな要因です。これらを「社会条件」と呼びます。

自然条件はなんとなく分かるよ。気温とか降水量とかだよね?

そうだね。じゃあまずは自然条件、特に「栽培限界」というキーワードから見てみよう。
栽培限界と自然条件への対応
各作物には「栽培限界」があり、極端に寒冷な気候や、降水量の極めて少ない地域では作物は育ちにくくなります。例えば稲は、年平均気温20℃以上の地域を中心に栽培されています。教科書の図には、稲のほかにも小麦・とうもろこし・大豆・じゃがいもなどの栽培限界も示されており、作物ごとに育つことのできる気候の範囲が異なることが読み取れます。
ただし、栽培限界は「絶対的な壁」ではありません。人々は、水を得にくい地域では灌漑を行い、気温の低い地域では寒さに強い品種を開発するなど、自然条件を克服して栽培地域の拡大に努めてきました。また、社会条件の変化に伴って、そのときどきで最も利益の得られる農産物を選択し、生産してきました。

灌漑って、よく聞く言葉だけど、具体的にはどういうこと?

灌漑は、作物の生育に必要な水を、河川や地下水路から引いた水で補給することだよ。降雨や河川の水だけでは生育できない場合に行われていて、水路に頼るぶん、水源の確保が課題になるんだ。
農業の発達と生産性 — 自給的・商業的・企業的への流れ
農業はもともと、農産物を家族や小さな社会のなかで消費する自給的農業として出発しました。西アジアなど降水量の少ない地域では麦類などの畑作が、降水量の多い東アジアから東南アジア・南アジアにかけては、畑作に比べて土地生産性が格段に高い稲作が発達しました。
産業革命は農業にも大きな影響を与えました。都市部の発達に伴って都市住民の食料や工業原料としての需要が増大し、品種改良や肥料の利用が進むなど農業の技術革新も進みました。また交通の発達によって農産物が広く流通するようになり、販売を目的とした商業的農業が広がりました。20世紀に入ると、社会の産業化と連動して企業的農業が発展しました。企業的農業では、世界市場に向けた単一の作物や家畜を、多くの資本と最新の農業技術を投入して大規模に生産・販売する点が特徴で、労働生産性が高いことが特徴です。

土地生産性と労働生産性って、何が違うの?

土地生産性は、単位農地面積あたりの生産量(生産額)の大きさを表す指標。労働生産性は、単位労働時間あたりの生産量(生産額)の大きさを表す指標だよ。アジアの稲作は土地生産性が高く、新大陸の企業的農業は労働生産性が高い、というイメージを持っておくと整理しやすいよ。
ホイットルセーの農業区分とは
世界の農業は、農産物の種類、経営規模や土地の利用方法などの違いによって区分することができます。地理学者ホイットルセーによる農業区分は20世紀前半に発表されたもので、その後の交通や貿易の発展により実態が大きく変化した地域もありますが、世界全体の農業の傾向をみるには、依然として有効な資料です。

どうやって分けたの?

大きく3つのグループに分けたんだ。「自給的農業」「商業的農業」「企業的農業」だよ。それぞれの中に、さらに具体的な農業形態が含まれているんだ。
自給的農業・商業的農業・企業的農業の一覧表
| 分類 | 主な農業形態 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自給的農業 | 遊牧・焼畑農業・粗放的定住農業・集約的稲作農業・集約的畑作農業 | 自分たちが食べる分を中心に生産。アジア・アフリカなどに多い |
| 商業的農業 | 混合農業・酪農・園芸農業・地中海式農業 | 販売を目的とする農業。ヨーロッパで発達 |
| 企業的農業 | 企業的穀物・畑作農業・企業的牧畜・プランテーション農業 | 広い土地・大資本・最新技術による大規模生産。南北アメリカやオーストラリアなどの新大陸に多い |

自給的→商業的→企業的って、なんだか発展の歴史みたいに見えるね。

いいところに気づいたね。実際、世界の農業は自給的な性格から、流通や市場の発達とともに商業的な性格を強めてきた、という流れがあるんだ。ただし、この区分は20世紀前半に発表されたものなので、その後の交通・貿易の発達によって実態が変化している地域も少なくない点には注意が必要だよ。
まとめ
- 農業の発達と分布は「自然条件(気温・降水量・地形・土壌)」と「社会条件(所有関係・市場・輸送手段・食生活・文化)」によって決まる
- 各作物には「栽培限界」があり、例えば稲は年平均気温20℃以上の地域を中心に栽培される
- 人々は灌漑や品種改良によって自然条件の制約を克服し、栽培地域を拡大してきた
- 農業は自給的農業から、産業革命を経て商業的農業・企業的農業へと発展してきた
- ホイットルセーは世界の農業を「自給的農業」「商業的農業」「企業的農業」の3つに大きく分類した(20世紀前半発表)
- 自給的農業:遊牧・焼畑農業・粗放的定住農業・集約的稲作農業・集約的畑作農業
- 商業的農業:混合農業・酪農・園芸農業・地中海式農業
- 企業的農業:企業的穀物・畑作農業・企業的牧畜・プランテーション農業


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