先端技術産業と知識産業化とは?第4次産業革命・GAFA・日本の工業の新たな取り組みまで解説

ルナ
ルナ

スマートフォンのアプリを作っている会社って、工場を持っていないよね。「工業」ってもはや工場だけじゃないの?

アトラス
アトラス

鋭いね!現代の工業は、モノをつくる「製造」から、知識や技術を生み出す「知識産業」へと大きく変わりつつあるんだ。今日はその変化の中心にある先端技術産業と、情報通信技術(ICT)の発展について見ていこう。

工業の特徴と付加価値

工業は、農産物や鉱産物などの原材料を加工して新しい価値(付加価値)を加え、有用な製品をつくる産業です。付加価値とは、製品の生産額から原材料や燃料などの購入費を差し引いた額で、製品を生産することによって生み出された新しい価値のことです。農林水産業や鉱業などの一次産品の生産に比べると、一般に労働生産性が高く、工業が発達すると雇用の機会が増えて国民の生活が豊かになります。さらに、工業の発達は商業やサービス業など他の産業の発展も促すため、多くの国で工業の振興を図る産業政策が進められています。

工業の発達と産業革命の4段階

工業は、産業革命を経て段階的に発展してきました。現代の工業を理解するためには、この発展の流れをおさえることが大切です。

産業革命時期主な技術革新特徴
第1次産業革命18世紀後半〜コークスを燃料とする製鉄法・蒸気機関・動力機械の発明工場制機械工業へ移行。軽工業が発達し、続いて鉄鋼業・機械工業などの重工業が成立
第2次産業革命20世紀前半〜電気の利用・科学の応用。ベルトコンベアを用いた流れ作業方式の導入自動車・航空機・化学製品などを生産する重化学工業が発達。製品の標準化・低価格化が進む
第3次産業革命20世紀後半〜コンピュータや産業用ロボットの導入工場の省力化・多品種少量生産・市場の変化に柔軟に対応可能な生産が普及
第4次産業革命現在〜AI・IoT・ビッグデータなどのデジタル技術の活用「データによる産業革命」。工業の一層の高度化・知識産業化が進む

第2次産業革命では、特に自動車の生産においてベルトコンベアを用いた流れ作業方式が導入されると、生産時間が大幅に短縮されるとともに製品の標準化と低価格化が進みました。第3次産業革命では、コンピュータや産業用ロボットなどの導入をはじめ各種の技術革新(イノベーション)が進み、工場の省力化や多品種少量生産、市場の変化に柔軟に対応可能な生産が普及しました。そして現在の第4次産業革命は、IoTやAI・ビッグデータなどの活用によって起こる製造業の技術革新のことで、「データによる産業革命」ととらえられることもあります。

先端技術産業(ハイテク産業)の種類

新素材やバイオテクノロジーを用いた産業や、集積回路(IC)・大規模集積回路(LSI)などの半導体やコンピュータを生産するエレクトロニクス産業などが「先端技術産業(ハイテク産業)」として急速に成長しました。軽工業分野にも重化学工業分野にもまたがりますが、最先端の科学技術を用いるという点でそれらと線引きされます。特に、スマートフォンやインターネット関連機器・ソフトウェア・デジタル家電など、情報通信技術(ICT)に関連した製品の市場が拡大しています。

最近では、人工知能(AI)技術の発達が機械に自律的に学習する能力を与え、生産管理や設計などの業務にも用いられるようになっています。また、工業製品がインターネットに接続されることによりもののインターネット(IoT)化が進み、相互の情報交換や制御が可能となりつつあります。スマートフォンで電子錠の施錠・解錠や自転車共有サービスへの活用など、IoTは私たちの日常生活にも浸透し始めています。

知識産業への転換と知的財産権

工業のグローバル化に伴い、付加価値の低い製品の製造は先進国から発展途上国に移っていきました。そのため先進国では、より付加価値の高い製品を継続的に生み出せる産業への転換が図られています。研究開発によって工業に関わる新しい知識や技術を創出したり、これまで蓄積した知識の組み合わせにより新分野を開拓したりすることが、従来にも増して重要となっています。この点は、先進国でより多くの研究開発費が投じられていることにも示されており、GDPに占める研究開発費の割合はイスラエル・韓国・スウェーデン・日本などで特に高くなっています。

研究開発などにより生み出された知識や技術は、特許権などの「知的財産権」によって保護され、経済的な価値をもつようになります。知的財産権には特許権・実用新案権・著作権・商標権などがあります。特許登録された知識や技術は、特許使用料の受け取り・支払いという形で国際的に取り引きされており、これを「技術貿易」といいます。技術貿易は主にアメリカ合衆国や日本などの先進国の間で拡大していて、先進国では一般に支払額よりも受取額のほうが大きくなっています。先進国の工業は、こうした知識により利益を生み出す「知識産業」へと転換しつつあります。

スタートアップ企業とGAFA

知識産業化の動きは、大企業だけでなくスタートアップ企業(新興企業)にもみることができます。スタートアップ企業とは、新しい技術や高度な知識を基礎に起業し、革新的・創造的な経営を行う企業のことです。これらの企業は独創的な技術や高度な知識をもとに起業し、新製品・新サービスを開発・商品化して経済の活性化に重要な役割を果たしています。例えば、スマートフォンが開発されたことによって、従来型の携帯電話の生産台数が急減したり、スマートフォンに搭載する多様なアプリケーションを開発する企業が数多く現れたりしたように、新しい製品の登場は関連する産業や人々の生活に大きな影響を与えます。

1980年代に世界に先駆けてインターネットが生まれたアメリカ合衆国では、ICT技術を活用するためのパソコンやスマートフォンの製品開発が進み、インターネットによる情報検索や商品の購入、SNSなども急速に広まりました。もとはスタートアップ企業であったアメリカ合衆国のICT企業が、「GAFA」と呼ばれる世界的な巨大企業群に成長しました。GAFAは公正な競争を妨げているなどとして、EUや中国などとの摩擦を生じるほど、世界の経済や社会に絶大な影響を与える存在となっています。

日本の工業の現状と新たな取り組み

日本の工業の地域別出荷額は、中京工業地帯(愛知・三重)が全体の約18%を占めて最大で、続いて阪神工業地帯(大阪・兵庫)、東海工業地域(静岡)、北関東工業地域などが続いています。工業出荷額の内訳は機械工業の割合が増加を続けており(2018年時点で約46%)、素材型工業の割合は低下しています。

中国などのアジア諸国の工業化は、日本製品の市場を奪うばかりでなく、工作機械や先端技術を用いた素材・部品の需要を増大させ、新しい輸出市場を生み出しています。日本がこうした国々との関係を活かすためには、より付加価値の高い知識産業に進化し続けることが必要です。大企業だけでなく中小企業のなかにも、他社にはないオンリーワンの技術や製品を売りものにする企業があり、日本の工業の多様性と層の厚さを示しています。小惑星探査機の落下板金加工・表面処理・ねじの製造・燃料の供給などに中小企業の技術が利用されているのも、その一例です。

また、研究開発によって生み出された技術を海外に輸出し、特許使用料などの技術料を受け取る「技術輸出」も増加しており、製品の輸出にとどまらない日本工業の新しい在り方がみられます。こうした中小企業においては、技術開発に大学や研究機関との「産学連携」が、取引先の拡大や情報収集には国内外で開催される見本市・展示会が、重要な役割を果たしています。

まとめ

  • 工業は原材料に付加価値を加える産業で、一般に労働生産性が高く、雇用・所得増加を通じて国民生活を豊かにする
  • 第1次〜第4次産業革命を経て、手工業→工場制機械工業→重化学工業→先端技術産業・知識産業へと発展してきた
  • ICT・AI・IoTに関連した先端技術産業が急速に成長し、第4次産業革命(デジタル技術による製造業の革新)が進行中
  • 先進国では付加価値の低い製造を発展途上国に移しながら、知識・技術を生み出す「知識産業」への転換が図られている
  • 知的財産権(特許権など)によって保護された技術は「技術貿易」として国際的に取り引きされている
  • スタートアップ企業がGAFAのような世界的企業に成長する事例が示すように、ICTを活用した新産業の創出が経済の活性化に重要
  • 日本の工業は中京・阪神など太平洋ベルト中心に発展し、機械工業が全体の約半分を占める。中小企業のオンリーワン技術や産学連携・技術輸出など、知識産業化への取り組みが進んでいる
アトラス
アトラス

「資源と産業(エネルギー・工業)」の全体像が見えてきたね。資源の分布から工業の立地・発展、そして知識産業への転換まで、すべてがつながっているんだよ。

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